メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

遠い国に行くと・・

 

母ちゃんが発熱で二週間絶食し、その間、点滴治療を受けていた。

やっと解熱し、食事を食べても良いと医師から許可がおりた。

 

母ちゃんはベッドにねている。

首が細くなった。触ると顔や首がカサカサ乾燥している。

鎖骨の飛び出しが目立つ。

背中を触ると肋骨の感触がはっきりわかる。

 

f:id:s-dai101030:20171014194639j:plain 口を閉じている顔にしわが増えている。

90歳だと言っても誰も疑わないだろう。

 

母ちゃんに声かける。

目を開け、私を見る。

「誰かわかるか?」

「ユミコ」

母ちゃんは今まで私の名前を間違えたことはない。

母ちゃんの認知が、また進んだのかな。

「違うよ、〇〇子や」

 

時間を置いてから

「ムジナ・・化けてきた・・」

「ムジナじゃないよ、〇〇子や」

 

母ちゃんは目を閉じる。

 

娘とも話もしたくない程、弱っている。

 

母ちゃんに〇〇さんから、柿もらったと話すと

 

指を耳にあて「聞きたくない。遠くの国に行く」

 

「綺麗なとこに行くん?」

「わからん、エンマ様が裁判する」

「悪いことしとらんよね?」

こくりとは母ちゃんは頷く。

「そしたら綺麗な所行けるね。その前に家に来んか?」

 

返事せず目を閉じている。

呼吸する胸の上がり下がりが早い。

 

なにげに手を伸ばしてくる。

私は手を握る。

柔らかく頼りない手。

 

脳梗塞で倒れる前の、ゴツゴツしていて働きの者の手ではなくなった。

寝たきりになっても口だけは達者だったが、今日は喋らない。

 

昼食がきた。

いつものミキサー食。

かわりばえのしないドロドロ食。

食欲失せる形態。

個人の嗜好に応じることをしない施設。

 

でも、食べないと死ぬ。

生きるために必要な水分と栄養。

だましだまし母ちゃんに食べさせる。

 

指を口にあて「食べたくない」と言う。

だよね、私もこんなの食べたくないもん。

持参した桃味のゼリーを食べさせると「美味いわ」と言う。

 

誤嚥していないか途中で「あー」って声を出させる。

湿った声は危険だ、誤嚥している可能性がある。

ごくんと飲み込むのを確認しながら食事をすすめる。

飲み込むのも時間がかかるようになった。

 

食事が終わり「今度いつ来たらいい?」と聞くと

「明日、朝」と返事がくる。

 

認知があるけど、母ちゃんは悲嘆と寂しさを抱えて苦しんでいる。

つらくて逝きたいんだ。

 

いつの日か、別れがくる。

それは遠いものでなく、年内、もしかしたら数日後。