メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

試合結果は引き分けでした。

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13時。

 

相手チームのベンチを覗きます。

 

M先生がカウンターの奥の円テーブルに立っています。

 

50代くらいでしょうか。

中肉中背の姿を改めてみると、自己管理能力はあるようです。

社会人として、できる人間はまず、自分の体の

管理をコントロールするのです。

 

肥満、痩せは問題外です。

 

M先生に声をかけます。

 

彼は紙を手に持ち、私が立っているカウンターの

内に座りました。

 

私はカウンター外に腰かけました。

 

まずは、先生に時間を取ってくれた事、恐縮ですと言い

また、いつもお世話になっていますお礼を言いまいした。

 

M先生はうなづきながら「十分な説明ができていなくて

すみません」と両者大人の挨拶攻撃です。

 

M先生は、A4サイズの紙を私が見やすいように

カウンターに配置します。

 

電子カルテから、プリントアウトした血液データー、画像

データーです。

 

「実は、昨日も8度の熱がでまして、今日も検査をしています」

「あー、それで昨日は元気がなかったんですね」

 

「診断は胆嚢炎、両側下葉肺炎、あとは以前から

おしっこが汚れており膀胱炎があります」

 

採血は一週間毎、こまめに変動をチェックしてありました。

 

特に、注意する項目には赤ペンで、マーキングしてあるます。

 

私に分かるよう、また、再度自分でも確認したのでしょう。

 

先生はデーターを見せながら簡潔明瞭に説明されます。

 

私が知る、ある病院の若い医師はプリントアウトは

しません。電子カルテを家族に見せ、早口の医学用語で

病状説明します。

家族と言っても、素人です。耳の遠い身内がいたりします。

先生の言っていることがさっぱり分からない人も

います。田舎ですから若造でも「お医者さま」なのです。

若造先生は、態度も悪く、椅子にふんぞり返っていたり

机の下の脚をくんでいたりします。

 

個室の中で行われる、症状説明。

喋って、終わるのですから「なにが語られたか」

証明は困難です。

 

聞いた方の理解力、受け止め方は曖昧になります。

 

喋った医師は電子カルテに、都合のよい記録を

入力します。

 

M先生は違いました。

 

可視化できるデーターを揃え、両手を胸で組、母ちゃんの

発熱の原因を探るという目が鋭い。

 

「治療と言っても、ここでは、手術とかできない。

点滴や薬での対処となりますが・・」

 

M先生に「母ちゃん、聞くと、腹が痛いって前から

言っているんです」小さい声で下を向いて喋るわたし。

 

「延命は望まないって、家族で決めてますが・・

痛みはどうにかしたいなって・・おもうんです。」

 

「医師の立場としては、まず、きちんと調べる

それが医師です。」

M先生は真剣な面持ちです。

 

(難しいなぁ、鎮痛剤くらいだすの簡単じゃん)

 

「弱っていくのは仕方がないと思っているんです。

ただ、安らかにスーと逝けれべいいんですけど。

痛みだけは、取ってあげたい、痛み止めとかで・・

 

暫く考えるM先生。

 

「解りました。検査は続け、必要時点滴とかします。

入所者の方は、家族が来た時だけ話すことが良くあります。

お母さんの腹の痛みについて、もうちょっと

聞くようにしていきます」

 

「先生、貴重なお時間をさいて頂き有難うございました。

データーは姉にも伝えます、本当にありがとうございました」

 

両者、笑顔で立ち上がりました。

 

(痛み止めだすって名言しなかったな)

 

殴り合いの泥試合にならなくて良かった。

 

9回までもったよ。

結果は引き分けかな。

 

M先生、結構良い感じだった。

もしかして、彼はすすんで地域医療に取り組んでいるのかも。

 

母ちゃんの部屋に入ると、点滴している。

 

小さい声で呼ぶと、小さい目をあける。

 

昨日の険しい表情がなくなっている。

 

眠いのか、すぐに目を閉じる。

 

「バイバイ、またね」握手する私。

 

「バイバイ、またね」おうむがえしの母ちゃんの返事。

 

帰り道、考えていた。

 

M先生は治療はきっちりしている、それを認めて欲しかったんだ。

 

称賛が欲しかったんだ。

 

私は先生を褒め殺しできたかな?

 

トランプさんじゃないけど、選択肢はM先生が握っている。

 

次回の試合での攻防を考えながら帰路に就く。