メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

死化粧は誰のため?

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朝10時、母ちゃんが入院している病院から電話がかかってきました。

 

「看護師の〇〇です。緩和医療の先生から、お話があるので

来れますか」

 

母ちゃんは膵臓癌

癌の圧迫で、胆管が詰まり、胆嚢が腫れた。                   一週間前に胆管にチューブを入れ、胆汁が流れるようになった。

 

当時の担当医(小僧)が、緩和医療医に代わると言っていました。

(無職だからいつでも了解です。)

 

「午後から外来診察にはいるので、午前中にお話ししたいとのことです」

(急、・・でも行く)

「11時に伺います。」

 

電話をきったあと、姉に連絡し同席してとお願いしました。

「分かったよ」

いつも、姉は頼りになります。

 

家の戸締りをして車で向かうこと40分。 

指定時間には、病室に着きました。

 

母ちゃんは眠っています。

目のくぼみが進んでいます。

呼んでも、肩をゆすっても目を開けません。

先週まで鼻腔酸素チューブをつけていたが、今日は、ありません。

(肺、良くなったかな)

 

「こんな顔に化粧するって難しいね」姉が笑って言います。

「テープでも貼って、くぼんでいるのを伸ばすだけで良いね」私が答えます。

 

母ちゃんの顔の造りは、どちらかと言えば不細工。

亡き父ちゃんが、かわいそうだからと貰ってあげたそうです。

 

遠くに住んでいるもう一人の姉が、死化粧すると以前から言ってます。

次姉はお洒落で、センスが良いほうです。

普段、母ちゃんを見れない分、化粧だけは自分がしてあげたいという

孝行な気持ちがあるんだと思います。

 

私は母ちゃんの化粧した顔を一回だけ見た事があります。

次姉の舅の葬儀に行った時、次姉が田舎風丸出しの母ちゃんに化粧を

したのです。

母ちゃんは「どこの奥様かしら?」と変身したのです。

これで次姉も安堵したと思います。

何しろ、次姉の嫁ぎ先は身分違いの偉いお家だったから。

 

「こちらにどうぞ」紺色の事務服を着た相談員さんが呼びにきました。

この人に役目は、いかに早く追い出すか、どこの施設に入れようか、です。

 

案内された部屋には、柔和な雰囲気の女医さんがいまいした。

(さすが緩和医療

病棟師長もやって来ました。

3人対2人、向こうが優勢です。

 

女医さんが、どっちが誰って感じで首を傾けます。

私と姉は5歳離れています。

(噛みついたろか!)

 

「私が三女で、こっちは姉です」

納得したように頷く女医さん。

 

前担当医からどんな説明を受けているか問いかけてきました。

・・・・もう少しで「あの小僧!」と言いそうになりました。

小僧が言ったことを、女医さんに伝えました。

 

痛みがあり、痛みどめの注射をしていると女医さんが話します。

(それで眠っているんですね)

 

女医さんも私達も今日あったばかり、女医さんも母ちゃんの状態を

つかみきっていない様子。

 

女同士の話は、焦点がずれて、ぐるりと飛んでいく事がある。

 

相談員さんは退院したらどこに行きたいかって話に持っていきます。

(外国でも良いですよ、退院できればね)

 

癌の転移の有無、食事食べれなくなった時の対応、ペインコントロール

現時点では、不明瞭です。

 

女医さんが言います「とりあえず痛みの緩和ですね。お母さんが好きなものは

何ですか?」

「饅頭とお喋りです」

「饅頭はないんですけど・・、あと気になる事ありますか?」

(さすが緩和医療、聞いてくれるんだ)

「ご飯の時についてくるスプーンでかすぎます」

「すみません、お金の関係であれしかないんです」

女医さんは、真面目に答えてくれます。

良い人です。

(今のところはね)

 

帰路の車の中で考えました。

 

私は母ちゃんの顔、十分見てきた。

姉もそうだと思う。結婚後もなにかと母ちゃんに呼び出され、今日に至る。

 

母ちゃんが死んだ時、誰があの顔見たがるかな。

土色で良いと思うけど・・

死んだんだから、死人の顔でいいんでは?

 

86歳の化粧。

落ち窪んだ眼、眉がなくなっていたなぁ・・。

眉書くの難しいぞ。人相変わるからね。

化粧失敗しないで欲しいな。

顔見て、みんなが失笑するようでは悲しい。

天国の父ちゃんが「お前、誰?」って驚かないように。

 

 

 

 

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