メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

大野商事経営「成田カナダ間直行便」試験飛行  一話

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日本政府は、財政赤字を補填するための策に苦悩している。

 

3年後には、東京オリンピックが予定されている。

島国の日本、英語が喋れず、外人を見れば逃げる。

 

恥じることはないのだ、伝統文化と最先端技術を持っている。

オリンピックで素晴らしい国だと評価してもらいたい。

 

そこで一つの企画が通った。

一石二鳥を狙えるか、イチかバチかの勝負。

 

外人客の日本観光取り込み作戦だ。

 

提案してきたのは、民間企業大野商事経営の航空会社「成田~カナダ間直行便」。

 

民間企業なので、ルートはこれ一つだけ。

 

21時成田発なので、内緒で飛べせる。

 

内緒なのは、大野商事の経営者がある大臣のお友達であること、

試しでやってみたいらしい。

 

大野商事の経営者は、たまたま買った馬が大当たりし、引退後も

種付け料で充分潤っている。

 

二匹目のドジョウを大好きな空で見つけようとして航空会社を

設立した。

 

空に、北のミサイルはいない。

 

北のお兄さんは、この世にはいない。おじいさんが送り込んだ

暗殺者の手にかかったのだ。

朝鮮半島は一国に統一された。

 

おじいさんは、良い政治家ではなかったが、こいつだけは

許しちゃいけないという判断は正しかった。

議会を通していては間に合わないと自腹をきったのだ。

 

世界はこの行為を暗黙に了解した。                       ただし、おじいさんが政界で暴れるのには

見逃すことはできない、引退を勧告だ。

 

おじいさんは、政治にちょうど飽きていたから、同意した。

 

空は再び平和を取り戻した。

 

「成田~カナダ直行便」は、ショーアップされている。

楽しく日本を知ってもらうための外人用専用観光機だ。

 

機長は越後屋 卓(36歳)東大卒、パイロット採用試験をトップで

   通過。アフリカ人も驚く視力と犬にも負けない聴覚と嗅覚を持つ。

 

   実家「越後屋」は、富山の薬問屋であり、卓は長男。

 

   3000坪の敷地内には手入れの行き届いた庭園があり、四季の  

   移り変わりを使用人から聞き育った。自然の良さを知る男になった。

 

   跡継ぎとしての所作、経営学を知らず知らず学んだ。

 

   対面する御方に失礼のないよう歯磨きの訓練を受けている。

   虫歯は一つもない。

 

   父親らについて行った旅先でいろんな感動をした。

 

   始めて見る舞妓さんがとても綺麗だったこと、お茶屋での遊びが

   高額であること、政治家との密談、外人相手の交渉

   英会話する父親、勝はカナダに留学経験がある。

 

   卓の母親、ジャスミンは勝のホームステイ宅の娘さんだった。

 

   ジャスミンはすぐに富山になじんだ。

   森林がカナダによく似ていたから。

   日に何度も窓を開け、森林の臭いを吸っている。

 

   卓が近所に遊びに行こうとすると「どこ行くがけ?」

   帰宅すると「おやつ食べられ」と富山弁で話かけるジャスミン

   

   物怖じしない、社交的な少年は、頭脳明晰だった。

   担任の教師は卓の鋭い質問に答えるため、予習を欠かせない。

   

   高校の修学旅行はディズニーランド。

 

   各6人づつのグループに別れての行動だ。

   山手線で品川駅に降りて、バスに乗る。

 

   電車内での放送は今でも忘れられない。

 

   「ぇ、次は~~、ぇ品川~~、ぇ品川でございます

    ぇどちらさまも、ぇお気をつけて、次は品川わんわんわん・・・」

 

   一度で「車掌」のとりこになった。

 

   富山弁に負けない、インパクト!

   独特の言い回しに感動した!

   卓は電車の中で拳をあげた。

 

   「俺、車掌になるっちゃ」

 

    車に乗るようになってからは、録音した車掌弁に聞き入った。

    車にこもるほうが集中できたから。

 

   研究すると喋り方は各自違っている。

   でも共通点は酔いしれている事。

 

   誰も聞いていない、または聞きたくても、聞き取れない

   語尾のはっきりしない喋り

   「自分の世界を楽しんでいる」

 

   卓は車掌オタクになった。

   寝ても覚めても、あの言い方が、この言い回しが頭をよぎる。

 

   「俺、電車の車掌になりたい」卓は周囲に決意表明した。

 

   反対したのは、意外にも大学の教授達だ。

   「あなたは、世界に行かなければならない、電車に乗ってる

    場合ではない」

   「お家、お薬屋さんでしょ、薬の研究して下さい。」

    卓の若い頃の話だ。

 

    教授達は学会に行くのに飛行機を使う。

    手頃なところでパイロットになれと勧める。

    勝もジャスミンも好きにして良いと言う。

 

   卓は航空会社に入社し、パイロット採用試験に合格。

 

    見た目のルックスと立ち振る舞いのマナーが良い事。

    頭脳明晰、落ち着きがある事などで上からの信頼が高い。

 

    車掌オタクであることを、卓は皆に公表している。

 

    みんなから「たっ君」と呼ばれる。

 

    たっ君は異例の早さで機長になった。

 

    彼の夢は空中で車掌弁でご挨拶すること。

    できれば、窓を開け、安全確認したい。

    「ぁ、発車オウライぇぇん・・・」笛を鳴らしたい。

 

副機長は山田一郎(40歳)

    彼は隣の機長席に座っているたっ君が憎い。

    恵まれた環境に育ち、なによりハーフという話題性。

 

    「糞っ、なんで俺がこいつの部下なんだ!」

 

    山田は出発前のミーティングの場面を思い出す。

 

    チームの中央に立つたっ君を見つめるCA達の

    眼差し。(俺も見んかい!

 

    彼はイラつく。

    自分はいつも目立たないと。

    名前も外見も、操縦士としての評価も・・!

    

 

  それなりに人生を楽しんでいる卓に、社長からの直々の電話があったのは

  一か月前。

 

  「内密に事を運んでもらいたい」

  「OK」

 

  「実は、公にはできないが、ビックプロジェクトがある」

  「OK]

 

  「日本を知ってもらい、外人観光客を引き寄せるという・・お達しがきた」

  「surprise!]

 

  「日本を紹介するんだから、語学が達者な君に観光案内任せるよ」

   「了解です」

 

  「機内サービスには舞妓さん、芸子さんを配備させる」

 

   笑い合う二人。

 

  たっ君、思いっきり喋って良いよ、車掌弁、外人には魅力的な言語だ」

 

   卓の夢が叶う時がきた。

   

  

 

        

   

   

   

   

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