メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

大野商事経営「成田~カナダ間直行便」試験飛行 第2話

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国際線機長、越後屋 卓(卓と書いてスグルと呼ぶ)36歳

 

車掌オタクを公表しているため、オタクのタクをとって

周囲から「たっ君」と呼ばれ、愛されている人物だ。

 

「もしもし、父ちゃん、オレオレ」

「オレオレ?、警察呼ぶぞ」

「何言っているんだよ、スグルだよ、長男の」

「あぁ、たっ君か」

 

父親までが、たっ君と呼ぶ。

 

「ちょっと父ちゃんに会って、相談したいことが・・・」

「たっ君、今、取引先の方がたと会議中だ。すまんが用事があるなら

LENEにしてくれ」

「LENEじゃダメなんだ。シークレットな事案なんだ」

受話器からツー、ツーと音がする。

 

卓の父親、勝は60歳。

 

薬屋だけに健康であることが、商談に臨む時の必須条件だ。

週二回ジムに通い、専属の栄養士を雇っている。体重を常に意識している。

 

自宅の庭園の手入れは、息抜きでもあり趣味でもある。

使用人とともに、植木の剪定をする。

 

妻のジャスミンとは相性が良いのか、ケンカはあまりしない。

一緒にいて苦にならない、むしろ、勝の方がジャスミンを探す。

 

ジャスミンはご近所との付き合いに忙しい。

回覧板、登校する学童の見守り、祭りのための会合

海辺の清掃活動、一泊紅葉巡りバス旅行、高齢者の話相手

 

富山に馴染んでくれて、ありがとうと勝は思う。

 

最近のジャスミンは顔まで日本人に似てきた。

もともと薄茶色の目をしていたが、富山弁を喋っても

違和感がなくなっている。

 

「あれー!、たっ君どうしたがけ?」

玄関に長身の卓が立っている。

「はよー上がられ、ちょうどブルーベリーのケーキ焼いたとこや」

卓はジャスミンに手を取られ、リビングのソファに座る。

「母ちゃん、まぁ、いっぱい作ったがいね」

「へへへ、カナダから送ってきたがや。近所さんにも配るわいね」

 

カナダの実家は大きな農園をいくつか持っている。

ブリーベリーが大好きな祖母が毎年乾燥したものを送ってくる。

「目にいいから、スグルに食べさせて」とミニレターを添えて。

 

母子で緑茶を飲みながら、ケーキを食べる。

「・・で、なんなん?、用があるがやろ」

「母ちゃん、面白い話があるがや。母ちゃんの意見聞きたいがや」

カナダ生まれである母親から、日本の行きたい観光地を聞き始める。

 

京都先斗町置屋「紅」の女将ふくは、前に正座する二人を眺めていた。

舞妓の豆ふくと芸子の豆小町。

 

(けったいな話やなぁ、ほんまかいな)ふく自身もいまだに信じられない。

飛行機内での接待なんて・・、できるんやろか?、・・この子達でええんかな?

 

「あんたら、しっかり聞いとくれ!うちうちでの話や、ほかに喋ったら

あきまへんえ!」

「なーに?お母さん、怖い顔してはる」芸子の豆小町は細面の美人。

三味線も踊りも上手い。

気くばりができる子。誰にでも優しい。

(ちょっと、真面目すぎるかな)

 

一方の舞妓豆ふくは18歳、おっとりしている。

外見は色白、目が大きくまつ毛が長い。鼻筋が通っていて人形の様。

赤い着物がとても良く似合う。

姉と慕う豆小町とは反対に気が利かず、話すテンポものろい。

お酌するのも、こばさないか見ていて冷や冷やする、不器用な子。

(そこが可愛いんだけどね)

 

ふくが話し出すと、豆小町は胸に手を当て前かがみになり

豆ふくは「おもろいですー」と手をたたきだす。

 

 

 

 

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