メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

「ハラスのいた日々」

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20年程前、聞きなれない声が

するので、窓を開けて外を見た

 

我が家の裏には海が広がっている

テトラポットに小さい生き物が

いた

 

近づいて見ると

仔犬だった

 

波しぶきで、仔犬は海に落ちた

 

助けなければならない

本能的な反射動作だった

テトラポットの上に降りた

 

一瞬、迷いがよぎった

「助ければ、育てなければならない

育てられるか?!」

 

動物なんて飼った事がない

興味もない・・・!

 

・・でも、ここは助けないと

死ぬよ、この仔犬

 

海に手を入れ、仔犬をつかんだ

 

フニャ,フニャして

骨の感触が気持ち悪い

どうやって抱えればいい?

 

手のひらに乗るような大きさ

何故か、一目散に風呂場に走り

洗った

 

ゴミを取ろうとしたのかな?

思い出せない

うろたえていた

 

母ちゃんが近づいて来て、小声で言う

 

「飼う気か・・・」

「飼うよ、仕方がない」

 

母ちゃんが畜生嫌いなのを

忘れていた

 

ポチと名付け、この仔犬にハマッタ

 

読む本が変わった

犬関係の書物ばかり探した

 

そういう時に出会った一冊

ハラスのいた日々

作者 中野孝次(ドイツ文学者、小説家他)

 

中野氏がひょんなことから

犬を飼う事になり、その仔犬の名が

ハラス

子供のいない中野夫妻がハラスと

過ごした13年間の記憶を文字に

変換した

 

新田次郎文学賞受賞

 

犬物語はたいがい、犬を擬人化した

稚拙な物が多い

 

「ハラスのいた日々」はさすが文学者

ハラスの動作を上手く描写している

読んでる側もその光景が見える

 

中野氏は犬飼い初心者だったのが

幸いしたのか丁寧にハラスとの日常を

綴っている

 

時代は50年前、日本の高度経済成長期

 

横浜に庭付き新居を建てた事で

妻の妹から「新築祝いに何が良い?」

問われ、「そうだね運動不足だから

散歩用に犬でも貰おうかな」

 

なにげに答えたらしい

そこからハラスとの出会いが始まる

 

数匹の赤ちゃんの中から、ハラスを選んだ経緯

 

ハラスをいよいよ親元から離し、自宅に連れて行く

時に車内で大暴れされた様子

 

食の細いハラスにエサを食べさせるのに

苦戦していた事

 

家に慣れたハラスが庭を走る可愛らしい仕草

 

散歩中に牛乳屋さんから牛乳パックを

くわえて帰宅したところ、大人達にウケタ

 

以後、買い物に出かけると、袋をくわえては

沿道の大人達から褒められるようになり

ハラスが得意げだった様子

 

中野氏はハラスを飼った当初は大学職員で

あったがすぐに自宅で執筆活動をするように

なった

 

仕事の区切りができると

ハラスが庭から「ワン」と吠える

 

散歩に出かけ、まだ山や崖がある所で

ハラスの駆け上がり、駆け下りるのを

見ながら

幸せの感情を知る

 

夫妻が出かけると、ハラスは

門戸のポストの上で、夫妻の帰宅を

待っていると近所の人から聞き

 

帰りをひたすら待つモノへの愛情を

覚える

 

この本は、随所、随所でハラスの

写真がのっているため

イメージしやすい形態になっている

 

ハラスが生まれた1972年頃、夫妻は

志賀高原に山小屋を持っていた

 

中野氏のスキー板に戯れるハラスの

写真、山で知リ合った犬たちと遊ぶ

ハラスの写真、元気そうだ

 

中野氏の交流関係者は著名人が多く

夫妻は知識人でそれなりに裕福らしい

海外旅行の折に買う土産はハラス様の首輪だ

 

食の細いハラスだったが

酒のつまみが好物らしく

中野氏の晩酌時にじりよってくるくだりは

爆笑だ

 

最大のクライマックス

友人に誘われて行った冬の志賀高原

ハラスが行方不明となる!

 

四日間にわたり知り合いの方達と

ハラスを捜索するが見つからない

 

悲嘆にくれる中野夫妻

ハラスの死を覚悟する

 

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新聞に載せる予定だったチラシ

 

その一文に

「死体となってもお知らせ下さればお礼を・・」

死体でもいいと・・・

 

もはや異種を超えた深い愛情

号泣

号泣

 

モノ言えぬ者への哀れみ

モノ言えぬ者だからこそ大事にして育てた

 

日常にいて当たり前の者を

失った事で、改めて知る深い愛情

 

 

最近、泣いていないなぁと言う方

犬興味ないわと言う方

 

これから飼おうと考え中の方

もちろん愛犬家の方がた

 

読んで欲しい!

 

価値のある本の紹介でした

 

 

 

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