メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

怪しい訪問販売の兄さん 対 犬を抱えた変なおばちゃん

愛犬は玄関前に客が立つと
かん高い怒声で吠えまくる

ガラス戸に映る客の影が
びびる

玄関は、開き戸だから、開けると
愛犬は外に飛びだす可能性がある

だから私は足元の興奮している愛犬を
片手で抱えて、客と応対している

先日、高校野球勝戦観戦中に
インターホンが鳴る

ただいま人気急上昇中の秋田県代表と都会っ子の
1戦だ

この注目カード観戦を邪魔した客は
長身、若手男子で
これは、イジルのにもってこいだ

エアーヨダレをすする

桑の葉のお茶の宣伝に回っている者です」
青年は、パンフレットを見ながら茶の説明を
始める

声をさえぎるように左手に抱えられている
愛犬が吠えまくる

青年は特徴のないしょぼい顔立ちだ
表情も乏しい

桑の茶を一度試飲してくれという

愛犬は吠え続けている、恥ずかしくなる程だ

「飲んでご意見を聞かせ下さい」
ペットボトルか缶をだすのかと思ったが
袋からトングを使って、ティーパックを一つ
取った

「すみません、お湯か水持って来て貰えますか?」

なんか、面倒な訪問販売だ
玄関前で作成するらしい
落ちついて飲めないよね

普通はお試しセットを客にプレゼントし
パンフレットを、置いて帰るもんだけど

玄関前で調合?、机も椅子もありませんが

何より暑い
勝戦だし
吠えまくる犬、抱えているし

青年は悪びれる様子もなく、「よく吠えますね」
って言っている
お前のせいじゃ!

「中に入ってもらえますか?」
「ありがとうございます。」

昔話だけど
母ちゃんが一度、リンゴ売りの訪問販売に恐ろしい目に遭っている

人なつっこい青年が、道路脇に車を止めリンゴを買ってくれと
声かけてきたらしい

「そうやね、5個貰おうかね」
「家までもってってやるよ」

家に着くと
青年と入れ違いに、包丁を持った男が上がり込み
「一箱買えや!」

母ちゃんビックリ、リンゴ一箱買わされた

この青年は悪さをするように見えない
手伝ってやらないと、プレゼン終わらない感じ
妙なキャンペーンに関わってしまった

青年は玄関で立っている

「上がって」
「いえ、上がり込みは禁止されてます」
面倒くさいな

「じゃ、パック貸して、私淹れるから」
「いえ、自分でつくるように言われています」
面倒くさい

お茶はね
玄関で味わうもんじゃないんだよ

「いいから、上がりなさいよ」
「ありがとうございます。」
青年は遠慮がちに茶の間のソファーに座る

「・・で桑の茶って温度は何度のお湯入れるの?」
「さぁ、ぬるま湯でもいいし、やかんで煮ても良いです」
「お茶って、温度大事なのよ、味をだすにはね
私も毎月、寺の坊さんに美味しいお茶をだすのに苦労してるよ」

「そうなんですか」青年はパンフレットをめくり
そして「書いてありません」とノーリアクションで答える
えっ?!、驚く私

「あなたねぇ、・・お茶っていうものは
美味しくなる温度ってあるのよ・・・」
あれっ、あれっ、何度だったか私度忘れ

「・・・まぁ、ポットから湯呑に熱湯入れてね
3分程さましてから急須に入れるのよ
お茶の入れ方って難しいのよ」
「なるほど」

「コーヒーだって美味しいお湯の温度ってあるじゃない」
あれっ、あれっ、何度だったか私忘れた

青年は私が準備してきたお湯の中に
ティーパックをくぐらせている

二つの湯呑で分け合い、飲んでみた

「不味い、はっきり言うとお茶の美味しさがないわ」
「そうすか、でもこれ血糖値を上げないんですよ」
きたきた、怪しいぞ

「何で?」
「お茶の中に入っている成分が血糖値を上がらなくするんです」
「どうして?」
青年は再びパンフレットをめくりだす

「ダメだね、そこんとこメカニズム説明できなきゃ
説得力弱いわ」
「すいません、研修には参加してるんですけど」
知らんよ、そんなの
勉強不足じゃない?

「便秘に効くんですよ」
便秘症の私は一瞬、魅かれる
カニズムは聞かないでおこう
どうせ答えられないだろうから

「良いじゃない」
「カフェイン入ってないから夜飲んでも良いんです」
「良いじゃない、夜にお茶飲みたくなることあるよね」
ギャバが入っているからリラックスしますよ」
ホントか、お前

「ダイエットにも効くんです」
「そう、良いんじゃない」
どうしたらこの子、帰ってくれるのかな


「・・・で、いくらなの?」
「3000円からです」
不味くて、高い

「高いよ、最初はお試しからだよ
数日間飲まないと、効果わからないじゃない」
「そうですね」

サイドボードに入れてあったゴボウ茶の
ティーパック数個入りを青年に見せる

「いつもの薬局で飲ませてくれるの
薬局がだすから良い物かなって思うじゃない
・・でお試し用500円買うの
良かったら買う、お試し用準備しなさいよ」
「うち、そんなのありません」

「じゃ、会社に提案しなさいよ、アイディアが良いって
評価されるよ」
「そうですね」

なんとも反応の悪い奴だ

愛犬もいつの間にか吠えなくなった
試合は秋田が負けた
「吉田君、泣いたらダメやん」
テレビ画面に向かって喝を入れる

「決勝戦って、こんな感じの試合多いですね」
「トーイン強いね」

「僕、兵庫なんです」
「えっ、関西なまりないね」
「みんなに言われます、大学は大阪です」
ホンとかな、覇気ないな


「バイトなんです、人と話すのが好きなんです」
好きならもっと勉強してこいや



「今からどこまわるの?」
「〇〇村行って、〇〇村行って、本部に泊まります」
ポケットから地図だして読み上げている

日当いくらなん?
歩合制?
本部って何?
なんでこんな田舎に来てるん?
大学生のバイトってこんなのもあるん?

聞きたい事はいろいろあるけど
何聞いてもこの子は的はずれな返事をすると思う

買わないとようやく悟ったのか
青年は帰って行った

今日は無事だったけど
青年はいつかやかんを持った強面の
兄貴を連れて押し込んで来るかもしれない

お茶屋さんじゃなくて、窃盗団の下っ端かもしれない
「おばちゃん、何度の熱湯かけたろか」
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