メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

紫のキャリーバック<命名編>吉田輝星君

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赤ちゃんの小さな手のひらに

指を入れると

ぎゅっと握ってくる

 

「まゆみちゃん、こいついっちょまいに

爪があるぞ」

 

産科病棟の一室

マー君が赤ちゃんの鼻をのぞいたり

足を持ち上げたり、薄い毛を撫でたりしている

 

マー君、抱いてみれば?

父親になった実感がもっとわくよ」

「こんなちっせえの抱けないよ

こわれたらどうするんだ」

 

「退院したら、赤ちゃんのお風呂係はマー君だよ」

「無理だ、3年まってくれ

そのうち慣れるから」

 

「じゃオムツ変えてくれるくれる?

一緒に練習したよね、人形使って」

「人形と赤ちゃんじゃ違うよ

足はずれたらどうするんだ」

 

助産師歴34年の江田さんが部屋にやって来た

 

「今日は赤ちゃんのお風呂は新米お父さんに

やってもらいますね、はい、準備」

 

まゆみちゃんが手際よく、着替えの肌着や

バスタオル、ガーゼハンカチを並べ始める

 

「江田さん、俺、ちょっと肩こわしていて

調子悪いんで・・・・」

「大丈夫よ、そばで教えてあげるわよ

何事も実践よ」

 

ベビーバスのお湯をはる

温度計を入れて、適温に調整する

タオルをかけて赤ちゃんの足から先にお湯につける

顔をガーゼでふく

頭、首、お腹、足を洗う

 

次はひっくり返して背中を洗う段取りだ

「俺、初心者だから今日はここまででイイっす」

 

赤ちゃんの身体の向きを怖くて変えられない

すべり落としそうだ

 

笑いながら江田助産師が赤ちゃんの向きを変える

 

マー君の手に何かが触れて、落ちた

「え、え、江田さん!、なんかとれた!

赤ちゃんの指かな?、大変だ!」

 

江田さんが手をいれて落ちたものをひらいあげる

「へその緒だね、こりゃ」

 

「大丈夫ですか?、血でてませんか!」

「怪我してるわけじゃないの

時期がきてとれるものなの

退院する時、箱に入れてわたすからね」

 

マー君は緊張していて

汗だらけになっている

横で見学していたまゆみちゃんが笑う

 

お風呂からあがった赤ちゃんは

まゆみちゃんに抱かれ

おっぱいを飲み始める

 

抱いていると

赤ちゃんの鼓動が伝わってきて

まゆみちゃんは幸せを感じる

 

マー君、赤ちゃんの名前どうする?」

「そうだな、こうせいってどうかな?」

 

「柔道の井上康生だね?、マー君ファンだから」

「強く逞しく育って欲しいんだ」

 

「良いね」

「てっぺんとる子になって欲しいな」

「期待でかすぎ、普通で良いよ」

 

「いつも楽しく、輝いている子になって欲しい」

「重たいよ、お菓子食べる?」

 

まゆみちゃんが袋からだしてきたのは

ベビーーラーメン

 

お好み焼きに入れると美味い

まゆみちゃんの好物だ

塩分が多いので妊娠中は控えていた

 

ポリポリとほうばるまゆみちゃん

マー君はひらめいた

「決まった、輝く星だ」

 

その時、赤ちゃんが右手を宙に上げた

シャキーン

 

 

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