メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

怪我をしている野生の狸は、山に帰る

 

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愛犬は右利きだ

 

「俺と遊べ」と言わんばかりに

炬燵で寝転んでいる私の顔を

右手ではたいてくる

 

口にくわえているカエルのおもちゃを

ぽとりと落とし、じっと私を見る

 

カエルを放り投げてやると

身体をはずませカエルが落ちている所まで

走り、くわえて、駆け戻って来る

 

愛犬を溺愛している

 

我が家の前は道路があり

車の往来はけっこう激しい

 

玄関を出て、道路を横断して、村の中心部まで歩き

山や田畑をまわり、そして

道路を横断して玄関に入るというのが

いつもの散歩コースだ

 

愛犬がはしゃいで歩く姿が

可愛くてたまらない

 

 

いつものように玄関から外に出た

いつもなら私の先頭を行く愛犬が

玄関近くの側溝を見つめ動かない

 

何気に側溝を覗くと

暗闇に光る二つの目

珍客だ

 

スマホをかざしても動かない

こちらをじっと見ている

 

愛犬を急かして

散歩に出かける

 

 

帰宅して、側溝を覗くと珍客は同じ場所にいる

動かない

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動けないんだ!

どこか具合が悪いんだ

 

ネコでも犬でもないのが分かる

山に住む野生動物だろう

 

水だけでもあげようか?

手をだしたら面倒を見る事になるかも

しれない

 

動物を飼うのは覚悟がいる

 

水と食料を与え

排泄の後かたずけを行い

遊ぶ場所を確保し

病気になれば病院通いをし

死ぬまでお世話しなければならない

 

人間の子を育てるのと同じくらいの

お金と時間がかかり、愛情が行きかう

 

暗闇に光る二つの目は動かない

近寄って見ていると

愛犬の面影に似ている

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役場に電話した

下手に手を出してはいけない

 

役場職員が我が家に軽トラで

やって来た

 

長靴と頑丈そうな手袋を身につけた

若モンとオジサンだ

棒と金網で作られた檻を持っている

 

「面倒だね、生きているね」と言う

 

側溝の上は道路から我が家に続く小さい橋が

かかっている

 

オジサンが橋の右から棒でつついて

珍客が左から出てくるところを若いモンが

待ち伏せ、捕獲するらしい

 

だけど持参してきた檻はでかすぎて

側溝には置けない

手で捕獲するのかしら?

 

しかもオジサンの持つ棒は小さすぎて

珍客の所まで届かないようだ

まぬけな二人だ

 

我が家の納屋には農機具や魚とり、木材

大工道具がある

 

オジサンを納屋に案内すると

長い棒を選んできた

どんだけ棒が好きなんだ

 

若いモンには網を貸してやった

 

オジサンも若いモンも動作が鈍い

うららかな昼下がり

いったんは網に引っかかったが

 

 

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お前、素人か!

珍客は網を抜け出し、側溝に逃げ帰った

 

後ろ脚か前脚かわからないけど

関節が一本ブラブラしている

たぶん、骨折していると思う

 

「捕まえたら保護するんですか?」

「いや、山に放す」

 

「獣医さんに診せないんですか?」

「自然の生き物は自然にしとかないといけないんです」

「でも死んでしまいますよ、骨折れてます」

 

行政の決まりなのかもしれない

 

食料を探して山から降りて来て

車に接触したんだろう

 

骨折が治る前に

この子は他の獣に襲われるだろう

あるいは餓死だ

 

いずれにしろ生きることは無理だ

 

悲しいけど

私は助けられない

 

この子は側溝の中を逃げながら

悲鳴をあげない

声を発しない

それほどまでに衰弱してるのだろうか

 

 

一時間も経っただろうか

納屋にあった洗濯ネットで捕獲された

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「大人の狸だね」と職員が教えてくれた

 

狸のこんもりした腰のあたりが

愛犬に似ている

 

大事にされている室内犬

怪我をしても山に返される狸

 

洗濯ネットに付いていた血

さようなら

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