メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

決して一人で行ってはいけない恐怖の館

彼女は一見、おとなしそうなたたずまいをしている

 

セミロングの髪を綺麗に整え

着ている服は清楚でしわひとつない

 

中肉中背、薄化粧

下がり気味の眉が穏やかそう

宗教勧誘者の中に混ざっていても違和感がない

 

しかし

私は彼女と一対一では会えない

 

彼女は

口の中にピストルを忍ばせているから

 

私を見ると毎回言う

「太って!もう、ミニクイ」とか・・

バシバシ肩を叩いて言う笑いながら

 

(慢性肥満だといい加減に認知してくれヨ)

 

私がたまに悩みっぽい事なんか話すと

彼女「それはそうと近所に口うるさい婆さんがいてさ・・」

(え?、私の悩みはスルー?)

 

彼女が住む一軒家はいわゆる秘境の地で

まわりは山と田畑、そして老人少し

 

歩いて来て、喋る老人が煩わしいと

彼女は玄関に鍵を掛け、固定電話を中止した

 

自ら孤立した彼女はスマホを購入する

欲した相手とだけやりとりする

 

運転できない彼女は私たちを不定期に呼びだす

「溜まっているの、遊びに来ない?」

ストレスオーバーらしい

 

一人では滅多打ちにされるので

私たちは手を繫ぎ、数人で出かける

 

私「恐怖の館・・」

友人「頑張ろ」

 

みんな幼馴染の彼女が心配で離れられない

ストレスさえ発散すれば彼女は悪い人ではない

 

自分にしか関心がない彼女は

ある意味もっとも強い人間なのかもしれない

 

久し振りに彼女の側でくだらないお喋りを始める

みんなが持ち寄ったお菓子や果物をテーブルに広げる

 

喜々として彼女がコラーゲン茶を準備する

彼女「コラーゲン茶よ、みんな!」

 

各々が好き好きにお喋りしていて彼女を注目しない

 

彼女が横にいた私に向かって大声を出す

「あんた、シミだらけだからコラーゲン茶飲みなさいよ!」

(そこまで言う?)

 

小鼻を膨らませ猛然と喋り倒す彼女の愚痴は堂々巡り

終結がないのがいつもの常だ

彼女は上手くいかない日々を嘆きたいだけだ

 

彼女の背後に

前回、私があげた多肉ちゃんがサイドボードに置いてある

 

間延びししなだれている

日光を与えていないからだ

 

お気に入りの多肉ちゃんだったけど

寂しい一人暮らしに少しでも楽しんでいただければと渡し

管理の注意点を説明しようとしたが・・

 

彼女「あぁサボテンね、知ってるよ

ところでさぁ、村の祭りなんだけど係になってって言われたの」

 

 

そういえば今までも

アリガトウって言葉を彼女から聞いた覚えがない

 

 

アリガトウ

言い慣れればストレスも減ると思うけどナ

 

私たちの慰問は午後4時には終わる

それぞれ家族の夕食準備をしなければならないからだ

 

彼女にまたねって手を振る

心の中で呟く

(やれやれ)

 

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