メタボンの行きあたりばったり

昨年定年退職しましたメタボンです。毒を吐きます。

美味しい肉じゃがいかがですか

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亡き母は男勝りで家事が苦手な人だった

 

整理整頓するという観念が欠如していたため

家の中は物が乱雑し、床も戸も汚れていた

布巾と雑巾の区別もない人だった

 

偏食があり慢性胃炎を抱えていたためか

料理についても無頓着で

私は子供の頃、何を食べて生きていたのか記憶がない

 

おまけに子供に父親の悪口を言うという

じつにけしからん母親だった

 

良い所が思いつかないよ、母ちゃん

 

ただ、唯一の自慢料理があった

煮しめ

 

お寺でのお参りがあると、振る舞いとして

客に煮しめをお出しする

その煮しめ作りは、村の女衆の役目だった

 

年に数回、お寺に集合して煮しめを作る

女衆は知らず知らずに煮しめ作りのノウハウを

覚える

 

母ちゃんの煮しめが食べたい時がある

 

しいたけや昆布などでたっぷり出汁をとった

煮しめ

もう二度と味わう事はないだろう

生きている時に教わっておけば良かった

 

料理は出汁が一番大事

料理の基本は出汁

どこかで誰か教えてくれないだろうか

 

先日、押し花教室のみんなと

市内の美術館にバスで出かけた

師匠の作品展を見るためだ

 

帰りはデパートに寄り、ご飯食べたり

買い物をしたりしてうろついていた

 

エスカレーターで3階に上がると

目に入ってきた

「〇〇キッチンスクール」

 

ガラス張りだから中にいる人達の姿が見える

常日頃、料理を習いたいと思っていた私

ガラス戸にへばりついて中の様子を伺った

 

習い事は教室の雰囲気が大事だ

嫌な奴はいないかどうか

気軽な感じかどうか

清潔か不潔か

流行っているのかどうか等々

知らない場所に、一歩踏み出す勇気がない

 

お団子ヘアの太り気味の若い女の子が声かけてきた

「お料理に興味あるんですか?」

「えぇ、まぁ・・」

「うち、パンとかケーキとか教えてるんです」

「日本料理は?」

「もちろんやってますよ」

 

洒落た構造、大人数が動いている

 

太り気味の若い女の子はスクールの説明を

始めた

口で言われてもね、やってみないと

わからない、通うかどうか

 

「一度、実習、見学にきても良いですか?」

「良いですよ、肉じゃが体験レッスンがあります」

 

そういうことで

後日、〇〇キッチンスクールに

肉じゃが体験レッスンを受けに行った

 

受付に体験レッスンに着た事を告げると

また団子ヘアの太った若い女の子が現れた

(以後、ブーと呼ぶ)

 

ブーは受付近くの丸いテーブルに私を案内する

本日の段取りが全くわからない私

ちょっと不安

 

ブーは〇〇キッチンスクールの加入、流れ等

パンフレットを用いながら説明し始める

面倒くさいな、早く実演にとりかかって欲しいな

 

「・・・で、〇〇さまはどのようなレッスンを

ご希望でしょうか?」

「料理の基本、出汁の取り方です

歳とっているけど料理一から習いたいですね」

 

一瞬、ブーが驚いたように大口を開ける

私も、え?!って・・・

変な事言ったかしら?って・・・

 

「〇〇さまは今まで料理どうしてたんですか?」

「適当です、でも、料理はやっぱり

基本が大事って、最近、思うようになって」

 

「大丈夫です、80歳の方も生徒さんに

いらっしゃいますから」

周囲の生徒さんを見てみるけど、

お婆さんの姿は見えない

 

「・・で、基本コースになりますと

12回で受講料が57000円になりますね」

「高いね、一回こっきりとかないの?」

 

「本日、入会していただくと

入会料13000円サービスさせていただきます」

入会料?!、そんなもん取るのか!

 

怪しいぞ、ここ!

「返事あとからでも良いですか

肉じゃが体験レッスンさせてよ」

 

「帰るまでに

お返事お願いします」

ブーは席を立ち、調理場に誘導する

 

調理の先生と代わるのかと思ったら

ブーがそのまま調理台をはさんで私と向かい合わせになる

 

「え?、あなたが教えるの?」

「そうです、まずはジャガイモむきましょうか」

私一人?、他に体験レッスンに来ている人

いないの?

 

「では、ジャガイモの面取りしましょうか」

なんで?、もったいない」

 

「面をとらないと煮崩れするんです 

はい、水にさらしましょうか」

なんで?

 

「デンプンを適度に落とすためです」

 

作業工程にいちいち、なんで?と理由を

聞く

ブーが答える

それで長年の疑問が解決していく

 

「〇〇さまは質問が多いですね」

「ごめんね、何も知らなくて」

 

肉じゃがの下準備は終了

ブーが肉を冷蔵庫から持って来る

赤身がきれいな上等の肉だ

 

「この肉、高いんじゃない?」

「肉じゃがの肉は上等な肉を使う事がコツです」

 

鍋に油をひき肉を炒め始めたブー

「えー、肉じゃがって炒めるの?」

 

肉だけではない、具材全部炒める

知らんかった、肉じゃがは炒め煮なのか

そして味付けの最初は酒から!

 

やっぱり、基本習うのと習わないのでは違うぞ

 

 

落し蓋のため、ブーがペーパーをだしてきて

切り始める

「もったいない、そんなの買うの」

 

ブーが一瞬、驚いたように大口をあける

 

私が変な事を言うのか、またはブーの癖なのか

取りあえず、ブーはよく驚き顔をする

その度に私もえ?って前のめりになる

 

特別な調味料は使わないが

計量にブーはうるさい

 

仕上げに醤油をたらっとかける

「ふりしょうゆと言います

これで味がしまるんです」

「ねぇ、もう終わるかな

トモダチとランチの約束があるんだけど」

 

ブーがまた驚き顔をする

え?って私が前のめりになる

 

できたあがった肉じゃがは汁だけすすった

「美味しいね」

「食べて下さい」

「食べなくても、わかるよ美味しいって」

 

ブーを急かして、入会契約書を作成させ

後日、基本コース12回受講料57000円

振り込む事にした

 

「どこでランチですか?」

「元町って言ってた」

「私、4月に越してきたので地図あります

以前は大阪のスクールにいました」

「左遷?」

ブーはまた驚き顔をする

 

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