押し花教室の同級生ライバルごくみに完敗
押し花
花や葉、ツルなどを
押して乾燥させたもの
額に飾ったり、瓶に入れたり
スマホケースにしたり
しおりを作ったり
生活にちょっと華やかさをそえる押し花
私は憂鬱だ
押し花が綺麗に仕上がらない
相変わらず縮んだり、変色する
こんな悪い素材では
メルカリに出品できない
小遣い稼ぎができない
11月には町の公民館で
作品発表会もあるというのに
デザインのひらめきが
降りてこない
憂鬱
寝不足で集中力にも欠ける
小雨ふるなか、押し花教室に到着
ごくみの隣に座る
ごくみの偵察のためだ
偵察だけで今日は帰ろう・・
その前に、師匠に言っておく
「先生、今日は調子悪いので
作品作りはまたの機会になるかも・・・」
ごくみは熱心な様子で机上に
持参してきた押し花を並べている
オレンジの背景に
自分でデザインしてきた通りに
押し花を配置している
盗撮できないので
こんなイメージです
いつのまにこんなに綺麗に
花を押す技術を身につけたんだろう!
負けた
ヘクソカズラまで持っている
負けた
ヘクソカズラは押すと黒に変色し
アクセントに使うと、作品全体が引き締まる
野山にあるらしいが私は未だに
見つけられない一品だ
負けた
デザインが良い!
負けた
頭脳明晰でおそらく小さい頃から
大人に褒められきたであろう、ごくみ
なんで芸術分野まで優秀なんだ
負けた
「どうしてそんなに綺麗に押せるの?」
「え?、普通に押してるだけだけど」
「花びら曲がっていない、葉も緑色だし
指で押さえてから押してるの?こつでもあるの?」
「ポンと置いてるだけだけど」
ふーん・・、
なんで私のは縮むのかな?
「乾燥機使ってる?、マット使ってる?」
「乾燥機使ってる、マットは時間がかかるから」
ごくみは私の問いかけに返事しながら
作品に没頭している
他の生徒さんをひと回りしてくる
Iさんは相変わらず大型サイズの額に花を
配置している
Mさんも大型サイズの額をそばに置いて
台紙(背景)の色合いを検討している
Nさんは出席簿をとったり
来年の師匠作のカレンダーの注文を
聞いて回っている
師匠、カレンダーまで売っているのか
そうか、そういう稼ぎ方もあるのか
Tさんは山の夕暮れ時の写真を持参して来ており
そのイメージで作品作りに取りかかろうと
している
Tさんのおっとりした雰囲気が私は好みで
仲良くなりたいと思っている
「先生、小さい額にしようかな・・
玄関に立てかけて置くのにする」
気乗りしないが、取りあえず一点作るか
ごくみがアメを生徒さんに配り出した
気が利くんだ
手ぶらでゴメンね、負けたわ
憂鬱だから
緑色の配色でデザインするか
持参の三つ葉を振りかける
難しい
思う感じに仕上がらない
「先生、あとお願いします」
「なにこれ?」
「森の癒しって雰囲気ですが・・」
師匠が難しい顔をして
作品の最終点検、仕上げをしてくれる
三つ葉の意図が通じないのか
三つ葉を外している
小学生が作ったみたいな
幼い作品
駄作だ
才能ないですね
私、ごくみに負けてます
あっ、ごくみが机を片付け、教室の掃除を
始めた
遅れをとった
あっ、モタモタしているすきに
ごくみがTさんに電話番号を聞き始めた
ダメよ、Tさんに手を出すな!