暗証番号は「3104」
運転中、すれ違う対向車のナンバープレートを
ついつい見入る癖がある私
並ぶ数字に持ち主の意図を推測するのが
楽しいのだ
「 1」こういう車には近づかない
自己主張が強いと推測するからだ
一番になりたがっている、もしくは一番なんだろう
職場でもスポーツでも才能、能力なんでも
一番にこだわっている
強気がナンバープレートに現れている
オレ様の車に接触でもしようもんなら大事になる
オレ様は車から飛び出して来て
きっと私の首を締め上げるだろう
「3333」ただただ車が好きな奴だろう
暇さえあれば車を磨き上げ、重厚なメカにうっとりしている
車を相棒と呼び、車と一体となり駆け巡る
時々、相棒と話をする
「今日の調子はどうだい?」
「サイコっすよ」
とかなんとか・・・
「2929」肉大好きな奴
制限速度は守るけど、自分の体重はコントロールできない
私が小娘だった頃の恋バナをひとつ
当時、片思いだった彼はかなりのイケメンだった
長身で何を着ていてもかっこ良かった
中身はどんな人間だったのだろうか?
たいした男でもなかったかもしれない
見た目ばかりを気にする年頃の話だ
私が燃えたのは
彼を狙う女が私以外にいたからだ
ライバルは長い髪さきをカールして花飾りなんか
つけている可愛らしい娘だ
彼を挟んでのライバルの動向がとても気になる
みんな同じ職場だったから
噂話はいろいろ入って来る
彼女は彼と食事には行ったことがあるらしいが
付き合っている段階でもないとか・・
時代はお金の出し入れがATMででき始めた頃
私も銀行で1枚のキャッシュカードを作った
4桁の暗証番号を考えなくてはならない
忘れてはいけない大事な番号
私にしか解らない番号
もっか片思い中の彼の名は
サトシ・・
3,10,4・・
暗証番号はサトシ、「3104」
決まりだ
間違えようのない番号だ
以後、お金を引き出すたびに打ち込む「3104」
週に1回、月に4回打ち込む「3104」
あっちのATM,こっちのATM
うちまくる「3104」
うつたびに彼の名前をつぶやく,サトシ 、3104
念が通じたか私はライバルに勝った
今に思うと気味の悪い行為だ
彼に知られれば引かれる行為だ
重すぎる
重すぎる