ネコの赤ちゃんたち、ゴメンネ
我が家の裏にある堤防
愛犬の散歩のスタート地点
海沿いを歩いて
隣の空き家を越して
そこから二軒目の家の前の
県道を渡り
村の真ん中を越して
さらに田んぼ道に行く
帰りは線路の手前にある家を
通るわけだが
この家には数匹の猫が
野放しで飼われている
今年になり赤ちゃんも
数匹生まれたようだ
愛犬の散歩はいつも夕方だ
昨日は小雨が降っていたので
散歩を中止しようかと
窓の外を眺めた
すると、窓から3mばかり離れた
堤防に3匹のネコの赤ちゃんがいた
黒とマダラと茶色
ヨタヨタ歩いている
堤防に二つの穴があり
3匹はその穴に入り出した
最後の赤ちゃん、茶色の首の細い
後ろ姿に胸が絞めつけられる
堤防の下は海
我が家にはすでにやんちゃな犬がいる
ネコは飼った事がない
3匹も無理だ
窓のカーテンを閉めた
見なかった事にしよう
ネコを保護したことで起こる
数々のお世話、家も汚れる
どこかに親がいるはずだ
親のそばに、もしかしたら
まだきょうだいネコがいるかもしれない
面倒だ
私は面倒だった
穴に入ったネコの赤ちゃんたち
海に落ちて、明日は死んでるだろう
嫌だな、白骨化するまで
海に浮遊する・・・
夜、ネコたちは泣かなかった
3匹一緒だから怖くないのかも
しれない
今朝、静かな小雨
こんな日は誰も来ないし
今日やらなければならない
用事もない
久々にビールでも飲んでと
台所に向かう途中で
窓の外を見てしまった
あのネコの赤ちゃんたちがいた!
穴の中で一晩,寝たのか
でも茶色がいない
黒が腰を抜かしたように
尻を地面につけており
マダラは立ちすくんでいる
側にカラスが二羽いて
交互に何かをつついている
きっと、こちら側からは
見えない茶色が
やられているのかも・・
カラスを追い払っても
瀕死の赤ちゃんと
やっぱり面倒みれない2匹の
赤ちゃん
赤ちゃんたちの声が聞こえない
この赤ちゃんたち泣かない
昨日も今も・・!
ゴメンネ
私はまたカーテンを閉めた
カラスが「ガー!、ガー!、ガー!・・」と
騒ぎだした、仲間が飛んできたのかも
しれない
ビールを飲み干す頃には
また、静寂になった
雨がやんだ夕方、私は一人
堤防に立った
肉片、骨、一部を探すため
濡れた綿毛のような毛を少し見つけた
ネコの赤ちゃんの痕跡はそれだけ
カラスはくわえてネグラに
生きたまま持って行ったか
海の中、テトラポット、隣の空き家を
見てみるが何も見つからない
声も音もしない
村のはずれにある我が家
隣は空き家
ネコを捨てやすかったんだろう
まさか線路脇のあの赤ちゃんたちが
歩いて我が家に来たとは考えられない
愛犬と雨上がりの村を散歩し
最後、線路脇のお家を通ったが
ネコの赤ちゃんたちはいた
私は情けない人間です
ただただ救出が面倒で
逃げた人間です
もし、もし、3匹のネコの赤ちゃんの
生き残りを見つけたら
今度は保護して、里親を探します
赤ちゃんの首の細い後ろ姿や
細いヨロヨロした足・・
ゴメンネ