紫のキャリーバック<旅立ち編>吉田輝星君
金足農のサヨナラ2ランスクイズ
歴史に刻まれるワンシーンだ
9回裏、2-1で近江を追う金足農
無死満塁でスクイズ!
巧妙なバンドで球がサード付近に転がった
3塁ランナーがホームにスライディングする
同点はしかたない、
捕球後、1塁走者をさすためファーストに投げる
一瞬の出来事だった
金足農の二人目の走者が3塁を蹴って来た
1塁手がホームに直球を投げる
ホームベース上でクロスする走者とキャッチャーミット
球場は静まり返る
何が起こったのかわからない
審判が両手を広げる
セーフ
2ランスクイズ、逆転勝ち
金足農の奇襲攻撃
観客は唖然、騒然、歓喜の叫び
見ていた私も鳥肌がたったワ
やってきた金農フィバー
選手が育てていた豚が9匹の赤ちゃんを産んだとか
選手の背中にセミがついてたとか
あきたこまちとか
野球小僧とか
仲良しだとか
生徒さん達が開発にくわわったお菓子とか
いつも手をつないでいるとか
予想外の快進撃のため、滞在費用がたりないとか
募金が始まり、年貢と称されたり
侍ポーズに警告がはいり、刀狩りとか言われたり
ユーモラスな記事が多い金足農
だからみんなを惹きつける
金農フィバーは地元に活気をつけた
奮闘した選手たちに県や市が感謝状を
おくるらしい
輝星が
プロ野球という道に歩きだす
一人で
もう仲間はいない
父さんが言うようにまわりはライバルだ
今までは野球が好きだけで
楽しんできたけど
これからは違う
組織に就職し、商品として扱われる
箱に入れられ、監視、管理され
企画会議にだされ、商品価値を評価される
売れなければボツにされる
良い数字を残さないと抹消される
ドラフト会議はシビアだった
使えそうだから日ハムが輝星を選んだ
何に使うつもりか
集客のためだと私は察する
新球場建設費莫大だね
5年後、輝星は
どこにいるんだろう
平成30年11月23日
日ハム入団のため千歳空港に到着
空港職員がおす台車に金足農のカラー
紫のキャリーバックが乘っている
これからどんな人生が待っているのかと
思うと切ない
怪我しないように身体を鍛えてね
独り相撲しないでね
まわりをちゃんと見るんだよ