悲しい廃屋物語、一部子供目線
廃屋
住む人がないまま、荒れ果てた家の事
我が家の隣の家
道路沿いの急カーブ地点に
建っている我が家
田舎だけど結構、車の往来がある
家から出た途端に車が横切って行く
そんな感じ
愛犬と散歩のため道路をわたる時
左右確認し、遠くのカーブミラーを
確認し、猛ダッシュで走る
この時、愛犬の首輪がはずれないよう
愛犬と足並みをそろえることが
重要
ただでさえ見通しが悪い所に
隣の廃屋の伸び茂る雑草のせいで
さらに見通しが悪くなっている
私が子供の頃、隣には5人家族が
住んでいた
お婆ちゃんとその息子夫婦、二人の姉妹
息子はたぶんアルコール依存症だったんだと
思う
しょっちゅう我が家に嫁さんが酒を
借りに来た
酒を買えない貧しい家だったんだと
思う、定職は知らない
酒ばかりではなく、味噌、醤油なども
借りに来た
風呂も入りに来たように記憶している
嫁さんが、しゃっくりをすると
しばらく止まらなくなるという
持病?があり
しゃっくりしながら
母ちゃんに物を借りに来る
子供心にも嫁さん、大変だなと
見ていた
息子さんは、後に精神病院に入り
そこで病死したと聞いた
嫁さんは、旅館で働いていたとも、
噂であり、はっきりしない
消息不明だ
幼い私、ある日、隣の家の窓から中を覗いた
嫁さんの枕元に裸の青い赤ちゃんが
転がっていたのを見た・・・
死産だったんだと思うが
葬式だしたのかな?
(今度、村の坊さんに聞いてみるか)
村に親戚はいなかったようで
民生委員をしていた亡父が頼りだった
んだと思う
長女は少し足りない女の子だった
いじめても反撃してくるだけの
知恵がなかった
貧乏の何が悪いのか、
村の子は長女をいじめた
遊びには入れない
姿を見つけると石や棒を投げる
泣いて去る子を
追いかけてはやしたてる
私もやった
夏、私達は海で泳いでいた
長女が岸壁の上を
妹と連れ立って歩いて来た
妹はまともで、勝気な子だった
私は海に潜り、石をつかみ
それを長女に狙いを定めて
投げた
長女に命中した
今でも、これは胸が痛む
なんであんなひどい事を
したのかわからない
言い返して来ない一家だからか・・
長女はやがて施設に入った
お婆ちゃんはどうしただろう?
あの家で死んだのか?
昔の事で、私もこの地を離れて
働いていたから
お婆ちゃんの生死はわからない
(これも、村の坊さんに聞いてみよう)
私が田舎に戻った時には
隣はかなり酷い廃屋だった
母ちゃんに、隣の妹はどうしたのか
尋ねると
「どっか行って結婚したらしいよ」
毎年、我が家は隣の廃屋の
生い茂る雑草に悩まされる
虫が湧き、爬虫類が住む
道路沿いだけにタバコのポイ捨てで
火がついたら大変だ
散歩好きの愛犬だが
隣の廃屋には近寄ろうとしない
村の区長に廃屋を処分できないか
聞いてみたが
所有者不明だから、どうにも
ならんと言われた
廃屋の嫁さんがN村出身だったのを
思い出し、探しだそうとしたが
すでに合併されて、N村は消滅していた
我が家は毎年、隣の廃屋の
草刈りをしている
そうしないと雑草のせいで道路の
見通しが悪く、車をだせないからだ
今年、私は町の役場の生活環境課に
電話した
不衛生であること、出火の危険性が
ある事を報告した
らちがあかないのは知っている
所有者の了承なしでは役場も動かない
でも隣が迷惑を受けている事実を
役場に知ってもらわないと
なにも始まらない
役場に2回目の苦情電話した時に
所有者を探してと伝えると
わかりましたと返答してたけど
あれから音沙汰なし
そろそろ、3回目の苦情電話を
役場にかけてやろう
気になる事があるのよね
廃屋の地面の中に二つの死体が
埋まってるんじゃないかと
愛犬、そういう気配を
察してるんじゃないかと・・・